やがて君になる 4話感想 - ゴジラは私たちの中にいるんだ -

「というわけで4話を見た感想は『これは大変やばい、とてもまずい』でした。これは皆さん危機感を持たないとまずいですよ」
「確かに彼、すごい人物だったけれど、危機感って?」
「私が問題にしているのは、その他人事のような視点です。ツイッタ上でのみなさんの感想も軒並み『彼はすごい性格してるね』『思いもよらなかった』『ちょっと彼はどうかしている』と言って、主語は彼を指しているのですが。
私のお気に入りの怪しいコンサルタントが著して曰く、『あなたが誰かを指差しているとき、他の三本の指が向いている人物に注意』と。

ライト、ついてますか―問題発見の人間学

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つまり私がまずいと言っているのは、あなたのこと、わたしのことです。
あなたが『やばい』って書きこんだタイムラインを冷静になってよく見てください。 『壁になりたい』『天井になってシミを数えられたい』『椅子は恐れ多い。窓ガラスでいい』『添い遂げて』『反射光になりたい』というつぶやきで溢れかえっているのでは。 というか、それもあなたが書いた言葉だったりしませんか?」
「反射光って? でもまあ、無害だし」
「無害だから異常ではないわけではありません。それは彼を見ていればわかるでしょう。もちろん、趣味において異常であっていけない理由はありませんが。しかし自覚は無くとも認識はしておいたほうがいい。
我々はいつのまにか椅子や天井になることに何も違和感を感じなくなってしまっています。江戸川乱歩作品の登場人物のような立ち位置を所与のものとして受け入れてしまっているのです。
彼はあなたの中に居る。彼は私であり、あなただ。
これはすごいことです。百合作品から百合読者に対するある種の告発ですよ。
ちなみに、2000年台にホラージャンル小説の賞で、『犯人は実は主人公その人だった!』があまりに多すぎるために同じオチを一律で不採用にする、という条件を設けたことがあったそうですが。
裏世界ピクニック もびっくりの認識ホラー展開でしょう、これ。SCP も思わず収容を見合わせるレベルです。
まさか2018年の百合アニメでその復活を見られるとは思いませんでした。」
「そこまで言うほどのことかなぁ」 「彼の態度に比べてば、まだ異世界転生のほうが主役になろうという貪欲さがあるだけ良いとも言えます。貪欲が良いとも限りませんが、エゴは必ずしも悪と断じてしまえるわけではない。人間らしいですよ」
「まあ机や反射光よりは転生者のほうが人間らしいかもしれないけれど」
「我々も人間性を思い出しましょう。取り戻す、まですべきかどうかはわかりませんし、取り戻さないままのほうが百合鑑賞には良い気もしますが」
「百合作品の読者でいるのも大変だね」

以下蛇足。
ブログの煽り気味なタイトルは「ゴジラ2000ミレニアム」より。本編中では「俺たちの」と言っていた気がするが政治的に配慮した。
なお同じ役者がゴジラ作品に次に登場した際に喋ったセリフは『角度の問題じゃない』

ゴジラ2000 (てんとう虫コミックススペシャル)

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