コスモファミリア一巻感想 次巻以降の展開がすごく楽しみ

コスモファミリア - 公的組織による対応の失敗、城平京の芸風 -

ハノカゲ氏のオリジナル漫画。気にはなっていたものの、購入に踏み切ったのは帯の『宇宙警察』という単語がツボに入ったため。

コスモファミリア* (1) (まんがタイムKR フォワードコミックス)

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かわいい女の子とかわいいマスコット群とかわいい女の子達。
世界の危機だけれど、主人公のアリスはあくまで自分の家族を取り戻したいだけで、世界の危機を積極的に解決したいとは思っていない。
彼女は、家族のついでに世界を救うのか、あるいは家族を守って世界を壊す決断をする鈴木光司の小説のような物語になるか、はてさて。

今のところの見どころは、個人的な恨み爆発のエージェント子ちゃん。
人選できるなら慎重な判断が求められる接触・交渉のチームからは外したいタイプ。人手不足なのか? それとも。
あの子、1巻の展開もそうだったけれど、どう見てもギリシア悲劇オイディプス王」的物語、悲劇の未来を避けようとしたが故の行動が、意図に反して悲劇を招来してしまうトリガになるとしか思えない。
言動が攻撃的で意図された嫌われキャラではあるのだけれど、ギリシア悲劇の素養のある読者からすると最初から可哀想なところがある...。

もう一人のエージェントは今のところどうやら善人っぽくて、こちらも自分の人生を滅茶苦茶にした相手を前に、今後どういう身の振り方をするのかが楽しみ。

コスモファミリア世界の行政というか、国連および政府はその対応において致命的なミスをしており、それだけでなく、その後も同じ失敗を継続している。
世界の危機に際して、幼い日の主人公がその鍵を握る情報を持っていると掴むまではよかったのだけれど、その後、母親が失踪した子どものメンタルケアを怠り、彼女との関係を決定的に壊してしまった。
(事態の状況からして、まさか小さな女の子に世界からの干渉を退ける力があるとは想定しえなかった、というのは言い訳にもならない。)
彼女との信頼関係を確立することは、情報取得に必須だった。無遠慮な大人が家まで踏み込むのを許したのは、対策チームに児童カウンセラー等の専門家がいなかったか、発言権がなかったものと思われる。
まあそのへんは、混乱した世界の中にあって、初期対応に十分な検討の時間がとれなかったのかもしれず、至らなかったのは仕方ないとするとしても。
コミュニケーションに失敗して後、関係の修復はなっておらず、エージェントを町に入れて接触させるとかもしてないっぽい。

まさか天川アリスの請求していた家屋修繕費用に給与現物支給(?)他、町内会費から出てるとかってことはないよね?

その後、本編中。組織団体が少女に積極的にアクションしたが、この際の手順もまた悪い。
偶発的だったのかもしれないけれど(後の展開を見る限りだと偶然の出会いを演出したっぽいが)、交渉の担当者が、いかにも個人的な恨みを優先してしまうタイプで、これでは対話による事態進展が望めない。
少女が意図して世界を壊しているわけではないとわかっているのだから、敵対する理由はない。
合理的に損得で考えれば、彼女とは形だけでも良好な関係を築くべきだと思われる。
(もしかして、彼女を飼っている組織の方には敵対する理由があるのか。後の展開で明かされるとか。わかってやってるとしたらエージェント子ちゃんは本当に人生を弄ばれて可哀想だな...)
あるとしたら、ここから国連とか米軍とか日本政府とかは前に出てこないよう、宇宙警察の不思議パワーで抑え込まれてる系の話なのか。
// そうでないほうが私の好みなので。巨災対を出せとは言わないが。政府と国連にはきちんと動いていてほしい。

ところでまだエージェント子たちの所属する組織の実態は不明だけれど、公の組織ならコントロールが不十分だし、公の組織でないなら、謎の力を手に入れて「宇宙警察」とか名乗る危険団体と少女を接触させてしまうこと自体がまずい。
後者の場合、公の組織は十分に機能していないことになる。

個人的には、物語に出てくる要素・ガジェット等が、すごく城平京原作作品みたいな感じで好き。
ファンタジーっぽいけれどSFも入っているところとか。
具体的には「宇宙警察」の語感とか。どこか「フロイライン山本」と同じ匂いがしません?

世界の危機なのに悪い奴は(いまのところ)誰もいない、というのが個人的に良い。
(このへんは、作者さんの以前のお仕事の「悪役」とは似ているようで、異なる。
以前の悪役さん(s)の彼らは知性体であり、自分たちの基準で、与える利益が損害を下回ると計算してやっている。
コスモフはペットであり、ネコがネズミのおもちゃと戯れるのと同じで、自分たちのやっていることに善悪や損得というものさしを持たない。)

マンガの技術的な話。
コスモフが破壊した世界がどうなっているかを考えるのは、真面目にやるとSF考証が必要になって大変。
主人公が世界との関わりを意識・無意識的に断っているため、コスモフにより破壊された世界の現状は、2〜3の雰囲気コマを入れるだけで、具体的に描画しなくて済んでいる。
また、これから描画されるかもという楽しみとして取って置ける。

マスコットがかわいいのは、世界の危機という問題の描画をやわらげている。
(これが使徒とかネウロイみたいなそれらしい見た目だと、「なんとかせなあかん、そうしない主人公は主人公としてどうなん?」というのが先に立ってしまう。)
この前のお仕事で得た知見(かわいらしいモンスターの描き方)を使えるし、コスモフはストーリーデザインの勝利と言える。

あー謎組織のメンバーは、変身するからああいう服装なのね。そういう言い訳を入れてくれると個人的には嬉しい。 // そうとも限らないかもしれない。

2巻は学校に通う話になるとのこと。数年後に(自分たち一家によって)廃墟になるとわかっている学校を天国として描く準備は完璧。ライカの体調では学校に通えないはずだったという助走も付けたし、どうなるか楽しみ。
// そしてエージェント子が掻き回す。本当に不憫な敵役だよあの子は。

コスモファミリア* (1) (まんがタイムKR フォワードコミックス)

コスモファミリア* (1) (まんがタイムKR フォワードコミックス)

コスモファミリア* (2) (まんがタイムKR フォワードコミックス)

コスモファミリア* (2) (まんがタイムKR フォワードコミックス)